航海記16 リベンジ青森釣行②

前にも書きましたが,クロマグロは現在,絶滅危惧種になっています.親マグロではなく稚魚まで根こそぎ獲ってしまったからです.しかし,大手メーカーは懲りずに獲り続けています.一本釣漁師や釣り人が自粛しているにも関わらず.まず,このことを念頭に続きを読んで下さい.

青森釣行1日目に訪れた大チャンスでした.竿には綱引きのような力が加わります.リールからはラインがどんどん出ていきます.竿をゆっくりと立てて,魚の感触を確かめながら魚が弱るのを待ち,リールをゆっくり回して魚を船の方に寄せます.魚には余力があり,船の反対方向に走り出します.寄せては離れを繰り返しました.15分もすると,魚はかなり体力を消耗したのか,どんどんと船の方に寄ってきます.水中に魚体がうっすら見えました.顔が水面から少し出てきました.『マグロだ』思わず声が出ます.船長が『40-50㎏あるぞ』と言いながらギャフを構えました.皆に見られて焦ったマグロは水中にUターンしましたが,想定内でした.船のミヨシ(先端部)に移動して船の左舷から右舷へ竿を振ってマグロが船の真下に入ることを阻止しました.疲れたマグロが水面に出てくる度に力を振り絞って潜ります.何度も竿を船の右舷,左舷へ交わします.自分でも気付いてなかったのですが,随分と疲れていたようです.『もう少し右に寄せて,左,左』と船長から檄が飛びます.“もう,大丈夫だ”と思った矢先,最後の力でマグロが潜りました.運動不足の腕が悲鳴を上げ,竿を船の手すりに置いて楽に右舷から左舷へ交わそうとした瞬間,『ぶちっ』と音を立ててラインが切れてしまいました.揺れる船上で唖然と立ち尽くし,唯一聞こえてくる風の音が鳴き声のようでした.握力はなくなり,上腕は虚しくぴくぴくしていました.

その後,チャンスもありましたが,ヒットすることなく1日目は終了しました.翌日は強風のために出港できず,2015年夏が終わりました.途中で疲れたことと,トロが美味いだろうなぁと考えたことが敗因です.絶滅危惧種のことは頭にはありませんでした.体を鍛えなおして,来年も挑戦します.