航海記18 試練のクエ釣り①

その白身はふぐよりも美味と言われる高級魚のクエ.九州ではアラの呼び名が一般的でしょうか.大きいものでは40㎏以上にもなります.水族館で見ると水槽の底あたりで“ジッー”としていますよね.漁師が延縄で獲るイメージで,マグロ同様に一般人が釣るような魚ではないと思っていました.

3年前,聖マリア病院で勤務していた時に,内科で働く後輩医師から“クエ釣りに行きませんか?”と誘われたのが始まりでした.彼も釣りバカで,年中,平戸や玄界灘で釣りをしていました.クエ釣りを知り,15㎏くらいのクエを釣ってからすっかりハマったとのことでした.ボウズのことが多く,5年間で1本も釣れない方もいます.彼は平戸の早福港から五島列島周辺によく行っていました.6月初めからお盆までの短い期間が好シーズンです.船からの釣りで,エサには活きイカを使い,ハリス(釣り糸)は60-80号という毛糸ほどの大変太いものを使います.クエは海底の岩場に身を潜めているので,エサに食いついたら,また岩場に戻ります.岩に釣り糸が擦れて切れるため,太い糸じゃないとバラしてしまします.魚も大きいですし.“また,釣れない釣りかぁ”とも思いましたが,誘われたので行くことにしました.

平戸では,活きイカを船長が用意してくれます.クエのいそうなポイントの上をゆっくり流し,仕掛けを投入します.イカは胴長だけでも25-30cmある大きいものを使います.クエ以外にはマハタ(タカバ)やキジハタ(アコウ)などの高級魚が釣れることがあります.何度か平戸に通いましたが釣れず,お土産にはイカ(エサ用ですが新鮮です)しか持って帰らないこともあり,娘は後輩と二人でイカ釣りに行っていると思っていたそうです.お盆を過ぎると平戸ではアラ釣りはしなくなります.すると,後輩が玄界灘で夜中にエサにするイカ釣りをして,早朝からアラ釣りをする遊漁船を探して来ました.イカも釣って朝一からアラ釣りができるから一石二鳥と考えました.これが試練の始まりでした.

次号に続く